AIカバー(AI音声で本人になりすまして歌う・話す動画)を巡り、法務省は2026年8月7日、声も既存の法律で保護される対象になるとの見解を初めて明示した。無断で有名人の声を模したAI音声を使い収益を得た場合、パブリシティー権の侵害に当たり得るとしている。
法務省は2026年8月7日、声の無断利用による民事責任の在り方を検討する会議の報告書案を公表し、生成AIによる声の無断利用は既存の法的枠組みで対応できるとの見解を示した。
検討は2026年4月から計5回行われた。背景には、声優や歌手の声が2023年ごろから無断でAI音声化され拡散されてきた問題がある。今回の報告書は、AIカバーを含む声の無断利用に対し、被害者が民事責任を追及できる法的根拠を明確にする狙いだ。
報告書は、氏名や肖像が持つ「商業的に顧客を引き付ける力」を独占できる「パブリシティー権」に声も含まれると解釈した。従来は著作権侵害として語られがちだったが、声の無断利用はパブリシティー権や人格権の枠組みで捉える点が今回の見解のポイントだ。
本人の声を模したAI音声による楽曲をSNSに公開し、広告収入などで収益を得た場合、パブリシティー権の侵害になり得るとされた。収益化の有無や、本人の声と誤認させる形かどうかが判断の分かれ目になる。
声は「みだりに利用されない権利」という人格権でも保護され得るとされ、パブリシティー権と合わせ二重の法的保護が及ぶ可能性が示された。
一方、ものまねや声まねは基本的にこれらの権利を侵害しないと整理された。AI技術か人間の声帯模写かに関わらず、表現の自由との線引きが今後も論点になりそうだ。
AI音声合成サービスを提供・利用する企業は、著名人の声を模したコンテンツ生成に関する利用規約や同意取得フローの見直しを迫られる可能性がある。クリエイターは、AIカバー動画の投稿・収益化前に声の権利者の許諾状況を確認することが重要だ。エンタメ・教育業界でも、声優や歌手の声を扱う際のガイドライン整備が今後進むとみられる。
Q1. AIカバーを個人が趣味で作って非公開で楽しむのは違法ですか?
A. 今回の見解は主に収益化や公開による権利侵害を問題としており、非公開・非商用の個人利用は直ちに違法とはされていません。
Q2. AIカバー 著作権の侵害にはならないのですか?
A. 楽曲の著作権とは別に、声の無断利用はパブリシティー権や人格権の問題として整理されました。楽曲の著作権処理は別途必要です。
Q3. 声優や歌手が無断利用されたらどう対応すればよいですか?
A. 今回の報告書により、パブリシティー権侵害を根拠とした民事責任の追及がしやすくなる見通しです。詳しい対応は弁護士など専門家への相談が推奨されます。
法務省が示した見解により、AIカバーをめぐる声の無断利用は、著作権とは異なるパブリシティー権や人格権の枠組みで法的に保護され得ることが明確になった。生成AI活用が広がる中、収益化を伴うAIカバー制作には権利者の許諾確認がこれまで以上に重要になる。生成AIの最新動向や活用サービスについては、あわせて AIナビのAIサービス一覧・ランキング もご覧ください。
参照: 「声の無断利用」が権利侵害に――法務省が見解を明示 「AIカバー」も対象(ITmedia AI+)
参照: 肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会(法務省)
※本記事の情報は執筆時点のものです。最新の情報は各公式サイトをご確認ください。
コメント (0)