■ 目的

AI無人兵器の急速な普及が、世界を **「小規模戦争の連鎖」** に導く危険を明らかにし、**技術開発より先に国際倫理規範を策定すべき理由** を論じる。

既存兵器と異なり、AI無人兵器は

* 普及速度が速く
* 民間技術から転用可能で
* 国家以外の主体(民兵・テロ組織)にも容易に取得可能である。

したがって、国際規範が後追いになれば抑制不能となる。

 

■ 小規模戦争が“手軽”になる理由

AI無人兵器の本質は以下の3点にある:

1. **安価**(Cost)
2. **自動化**(Automation)
3. **可搬性・運用主体の非限定性**(Portability / Actor-Agnostic)

これら3要素は、武力行使の“閾値を劇的に低下”させる。

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■ ケーススタディ

● ウクライナ戦争

NATO事務総長ストルテンベルグは、2025年6月10日の公式演説で、

> **「400ドルのFPVドローンが200万ドルのロシア戦車を撃破している」**
> と述べ、戦力交換比(cost-exchange ratio)が劇的に変化したと警告した。
> (NATO, 2025)

また国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、2024–2025年の報告書で、
「短距離ドローンによる市民直接攻撃が増え、多数の死傷者が発生している」
と記録している(OHCHR, 2024)。

 

 ● アゼルバイジャン vs アルメニア(ナゴルノ・カラバフ紛争)

CSISの分析は、アゼルバイジャン軍がTB2ドローンにより

* 戦車
* 自走砲
* 補給車両
  を多数破壊し、**戦局の主導権を握る要因の一つとなった** と結論している(CSIS, 2020)。


● 中東・アフリカ:国家をも脅かす“民兵のドローン能力”

国連UNIDIRやWest Point(CTC)は以下を詳細に報告する:

* フーシ派によるサウジ石油施設攻撃(UNIDIR, 2024)
* ISISによる市販ドローン爆弾(CTC, 2023)
* アフリカ民兵組織による安価ドローン攻撃(同上)


 ■ 日本の軍事専門家の意見

以下の専門家は、共通して **“紛争の閾値低下”** と **“小規模戦争の常態化”** を指摘している。

1. 紛争閾値の低下

* **小泉悠(東京大学)**
  無人兵器が紛争の敷居を下げ、“絶え間ない小競り合い”が標準化していると指摘。

* **高橋杉雄(防衛研究所)**
  無人機は「エスカレーション管理を難しくし、限定攻撃の頻度を増やす」。

* **神保謙(慶應義塾大学)**
  「武力行使の敷居が下がっている」と複数講演で説明。


 2. 小規模戦争の常態化

* **渡部悦和(元陸将)**
  新時代は「恒常的な小競り合いの戦争」になると述べる。

* **三宅裕一郎(防衛大学校)**
  低コスト兵器が紛争頻度を上昇させ、代理戦争を促進すると分析。


海外の専門家も同様の見解を持つ者が少なくない


■ まとめ

AI無人兵器は、権力者・独裁者・民兵・テロ組織にとって **「低リスクで行使可能な武力」** となるだろう。

理由:

* 自軍兵士が死なない
* 安価で大量生産可能
* 高精度な限定攻撃が可能
* 民間技術から簡単に転用できる
* 誰でも「とりあえず使える」

そのため、
**世界は今、小規模戦争が途切れなく発生する危険に直面している。

 

■ 結論

**国際的な「AI無人兵器倫理条約」を、技術開発より先に作るべきである。**
AI兵器は、核・化学兵器とは異なり、“非国家主体でも使用可能” という特性を持つため、規範が後追いとなれば制御不能になる。

したがって、
**研究開発を一時停止し、国際的な枠組みを先行させる勇気が必要である。**


 ■ 私的蛇足

浅慮な政治家・権力者・独裁者・テロ組織ほど、**「新しい武器を試したがる心理」** を持つ。

武力行使の前には、歴史上必ず同じ常套句が繰り返された:

* 「限定的だから問題ない」
* 「偵察にすぎない」
* 「人的被害は出ていない」
* 「挑発されたので反応しただけ」

AI無人兵器の普及は、この“典型的言い訳”を**はるかに言いやすくする**。

また、AIによる生産性の向上で生み出された富やサービスが、行き場を失い“破壊=戦争”に向かう可能性を指摘したい。これは、**ベーシックインカム導入の強力な根拠**にもなるだろう。

 

■ 引用元

NATO. (2025, June 10). *Secretary General’s Address*. [https://www.nato.int](https://www.nato.int)

OHCHR. (2024). *Report on Civilian Harm from UAV Strikes in Ukraine*. [https://www.ohchr.org](https://www.ohchr.org)

Center for Strategic and International Studies. (2020). *The Air and Drone War over Nagorno-Karabakh*. [https://www.csis.org](https://www.csis.org)

UNIDIR. (2024). *Weaponization of Commercial UAVs*. [https://unidir.org](https://unidir.org)

Combating Terrorism Center at West Point. (2023). *The Islamic State’s Drone Program*. [https://ctc.westpoint.edu](https://ctc.westpoint.edu)